このサイトを立ち上げたとき、いちおうどんなものでも一ヶ月につき一本はエッセイを書く予定でした。が、早くもそれができませんでした。現在、お堅い論文の方が忙しくて…。

そこで今月は『ニューヨーク・タイムス』に出ていた記事を紹介します。いま『ニューヨーク・タイムス』では「アメリカで〈人種〉はいかに体験されているのか」という記事が連載されています。ここで言われている〈人種〉というのは、最近の人文系・生物学系双方が合流してできてきた考え方で、(1)生物学的に〈人種〉というものは何の根拠もない、(2)現在いわゆる一般社会で〈人種〉と呼ばれているものは社会的経験のなかでつくられ想像の産物だという議論に沿ったものです。つまり〈人種〉とは経験されて初めて実体としての具体性を持つものなのです。ですから私はこのコーナーの入り口で「黒人文化(まぁそんなものがあるとして)」と書いたわけです。

さて今回紹介する記事は、ヒップ・ホップ文化に夢中になり、ヒップ・ホップの本を書き、それを売り歩いている白人青年の話です。その記事のなかで、その白人は「肌の色をのぞけば、自分は黒人」と考えているそうです実は僕もそんな人間のひとりで、この記事を読んだときとてもうれしくなりました。(さらにその白人はシカゴのハイド・パーク地区で育ったと書いてありました。ハイド・パークは黒人居住区サウスサイドのど真ん中にある地区で、シカゴ大学があるところ、つまり僕が4年前に住んでいたところなのです。)

本来なら翻訳してでも紹介したいのですがリンクで勘弁して下さい。同記事は「文化は誰が所有するのか」という問題、しかもアメリカですからそこには〈人種〉問題が絡んできていて、とても興味深い実例を紹介してくれています。そのあたり、いずれまとめたかたちでエッセイにします。とにかく面白い記事なのでみなさん是非一読下さい。

N. R. Kleinield, "How Race Is Lived in America: Guardinng the Borders of the Hip-Hop Nation," New York Times, 6 July 2000.

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