1960年代、キングの「右腕」として活躍したアンドリュー・ヤングが、『アトランタ・ジャーナル・コンスティチューション』に投稿した記事で、今回の選挙におけるヒップ・ホップ・アーティストの活動を大々的に評価。わけても、ラッセル・シモンズのHip Hop Team Vote Initiativeと、前にこのブログで伝えた、P Diddy CombsのCitizen Charge Campaign。
ブラック・パンサー党は、そもそも「自衛のためのブラック・パンサー党 the Black Panther Party for Self-Defense」と名乗り、警官が黒人市民に加える不当な暴力ーー1990年のロドニーキング事件を思い浮かべてほしいーーを「武装」という手段で「自衛」するのを目的として創設された。黒いベレー、上下黒のレザージャケット、脇に抱えたショットガンの姿は、多くの者を惹きつけた。しかし、それは、警察官にしてみれば、強烈な憎悪と恐怖の的になった。
Truth Commissionとは、「部族間」で夥しい「政治的暴力」が起きた南アフリカにおいて、ネルソン・マンデラが設立した委員会のことである。この委員会は、アパルトヘイト時代の憎しみを乗り越えることを目的に、真実を語ったものには恩赦を与え、犠牲者と加害者との対話を促し、ポスト・アパルトヘイトの時代の南アの建設を目指したものである。
Ghost of Mississippiの最後のシーン、裁判映画ではよくあることだが、"guilty"という判決がくだったとき、検察官とウーピー・ゴールドバーグ扮する殺害された公民権指導者夫人、裁判所に詰めかけたギャラリーは抱き合って喜んだ。私は、シカゴ・サウスサイドでその映画を観たのだが、オーディエンスのなかからは「笑い声」が聞こえた。その笑い声は、「有罪」と「真実」との懸隔を示すように思える。
公民権運動家(そのなかにはキング牧師も含まれる)は、そこで、全米に向かって「良心への訴え」というコールを発表し、セルマ=モントゴメリー間の行進を再度実行に移すので、それに参加するように呼びかけた。このような運動の盛り上がり、そして公民権運動に対するシンパシーの高まりを受け、リンドン・ジョンソン大統領は、当初は彼の政策日程にはまったくなかった新公民権法(投票権法)の議会上程を決意する。テレビで放送された演説で法案の趣旨説明を行ったジョンソン大統領は、演説の最後を公民権運動のスローガン、「我ら打ち勝たん」 We Shall Overcome" で締め括った。それを観ていたキング牧師の頬には涙がつたったと言われている。このような劇的な運動に関し、キングの伝記でピュリッツァー賞を受賞することになる公民権運動史家デイヴィッド・ギャローは、「公民権運動中もっとも統率がとれ、もっとも効果的だったものだった」と評価している。
こちらに来て、アーロン・ネヴィルが60年代に歌った"Tell Like It Is"はプロテストソングだということを知った。作詞作曲は別人だが(Lee Diamond, George Davis)彼が歌ったときに、この曲は1960年代の「時代精神」を映し出すものになったのだ。その歌詞はこうなっている。
Tell It Like It Is
If you want something to play with
Go and find yourself a toy
Baby my time is too expensive
And I`m not a little boy
If you are serious
Don`t play with my heart
It makes me furious
But if you want me to love you
Then a baby I will, girl you know that I will
Tell it like it is
Don`t be ashamed to let your conscience be your guide
But I know deep down inside me
I believe you love me, forget your foolish pride
Life is too short to have sorrow
You may be here today and gone tomorrow
You might as well get what you want
So go on and live, baby go on and live
Tell it like it is
I`m nothing to play with
Go and find yourself a toy
But I... Tell it like it is
My time is too expensive and I`m not your little boy
これは単なるラブソングだ。ところが、"you"をアメリカ白人に置き換えると、「自由だ自由だということばをもて遊ぶ play with」ことに対する抗議となる。
第一回ディベートまであと30分。会場は、公民権運動の激戦地のひとつミシシッピ大学だ。なかには"Tell like it is!"と声をかけたくなっているものもいると思う。ちなみに、デトロイト・ニュース紙によると、ミシガン州の最新の世論調査ではついにオバマのリードが10%まで拡がった。これまで奇人変人のマケインは何度も「ギャンブル」をしかけてきたが、今回の選挙戦中止ギャンブルには誰もひかからなかったようだ。
この体制は、白人労働者階級(日本ではより穏便に響く「勤労者世帯」という言葉がなぜか好まれる)とマイノリティが利害の一致を見ている限り維持されるものだった。ところが、1980年、ケインズ主義的な経済政策、いわゆる「大きな政府」を解体することを中核としたロナルド・レーガンが提唱した政策が白人労働者階級に訴求したのである。実際のところ、英語ではただ working class と言うことの方が多いが、通例、ただ単に working class と呼んだ場合、そこに黒人は入らない。これは、正確には「黒人と利害が対立する階級の白人」を意味する「コード化された言葉」coded word のひとつである。そして日本人に向けられた敵意は、もちろん、黒人にも向けられたのだ。
ちなみに彼は一貫して民主党支持であり、2004年にもジョン・ケリーの選挙応援を行った。きわめて「アメリカ的」に思える彼は、しかし、偏狭な「愛国心」のシンボルとして利用されることがある。それを最初に行ったのは、Born in the U.S.A.が大ヒットしていた1980年のロナルド・レーガンである。レーガンの政治利用を聞いた彼は、その後に行ったコンサート会場で、自分の立場を明確にするため、1970年代の鉄鋼不況を綴った名曲、"The River"を、アメリカ労働総同盟・産別会議会長に捧げると語って歌った。
こちらに来てから知り合いになった黒人の政治学者の方がこんなことを述べていた。その学者は、オバマの自伝の書評を頼まれて初めて、彼の著作 Dreams from My Father を買おうとした。ところが、書店が言うには、置くとすぐに売り切れになるので在庫がなく、一週間待たなくてはならないと説明を受けた。そこでこう思ったらしい。「この街で、この圧倒的多数が白人の街で何かが起きている」。
ナンバー4。共和党が選挙戦の武器にする「大きな政府」「テロ」の二つは人種を暗示する「コード化された言葉」である。前者は福祉に依存する都市の黒人やラティーノ、後者は中東出身者。後者の人種化は実に都合が良い。オクラホマ連邦ビルを爆破したのが「アメリカ第一」(今回の共和党のスローガンは Our Country First)を唱える武装民兵だったことはすっかり忘れているのだから。
The road ahead will be long. Our climb will be steep. We may not get there in one year or even in one term, but America,
このとき、わたしには、マーティン・ルーサー・キング博士が暗殺される前日に行った演説が思い浮かんだ。
キング博士はこう言っている。
Like anybody, I would like to live a long life. Longevity has its place. But I'm not concerned about that now. I just want to do God's will. And He's allowed me to go up to the mountain. And I've looked over. And I've seen the Promised Land. I may not get there with you. But I want you to know tonight, that we, as a people, will get to the promised land!
I have never been more hopeful than I am tonight that we will get there. I promise you: We as a people will get there.
ここでテレビに映し出されたジェシー・ジャクソン、彼の頬には涙が伝っていた。オバマは、キングの言葉、いやむしろ正確にはこう言うべきだろう、アメリカの人びとにキングが残した遺言をはっきりと引き受けたのだ。may not を will と肯定型に置き換えて。「「約束の地」に辿りついて見せる」と言い切ったのだ。
このことばが響いたのは何も「黒人」だけではない。そうわかっていたからこそ、オバマは、指示代名詞 there を用いたのだ。「そこ」と言っても、それはみなにわかったのだ。
グラント公園を埋め尽くした20万人が Yes We Can と初めて大きな声で連呼し始めたのは、この決定的フレーズのあとである。
この演説の後半部は、2004年の民主党大会の基調演説を彼が行ってきた主張をそのまま繰り返したものである。アメリカを〈人種〉や政治思想によって分断された国家であるとみなす考え方は、1990年代半ばより広く共有されてきた。ここでオバマは、そのときに広く読まれた著書、アーサー・シュレジンガー・ジュニアのThe Disuniting America をはっきりと意識しつつ、シュレジンガーらの主張を否定し、その勢いを一気にアメリカ愛国主義につなげている(しかしながら、「ケネディ神話」を作り出した人物のひとりであり、それゆえケネディをこよなく愛するこの老歴史家は、オバマ当選を喜んでいると思う、たぶん…)。
It's the answer that -- that led those who've been told for so long by so many to be cynical and fearful and doubtful about what we can achieve to put their hands on the arc of history and bend it once more toward the hope of a better day. It's been a long time coming, but tonight, because of what we did on this day, in this election, at this defining moment, change has come to America
Two weeks after the first march was turned back, Dr. King told a gathering of organizers and activists and community members that they should not despair because the arc of the moral universe is long, but it bends towards justice. That's because of the work that each of us do to bend it towards justice. It's because of people like John Lewis and Fannie Lou Hamer and Coretta Scott King and Rosa Parks, all the giants upon whose shoulders we stand that we are the beneficiaries of that arc bending towards justice.
さらにオバマの才覚。キングの演説(YouTubeのリンクを参照)では、"How long, not long”というフレーズが繰り返されている。ブラックパワー宣言が行われ、ロサンゼルス・ワッツ地区では大規模な人種暴動が勃発した1966年の夏、キングは、たちこめる暗雲(と催涙弾のガス)を振り払うかのように、夢が現実となる日まで「長くはない」と断言していた。黒人のキリスト教の伝統のコール・アンド・レスポンスを駆使しつつも、自分で自分に言い聞かせるかのように何度も何度ももそう述べていた。
ここに来て厳しい立場に置かれているのは、そのような黒人議員たちからなる連邦議会黒人幹部会 Congressional Black Caucus (CBC)だろう。これまでCBCは、数ある議会会派のなかでも、もっともリベラルな会派として、もっとも団結した投票行動をとってきた。ところが、大統領が黒人となると、そしてその大統領と政策が噛み合わなくなった場合、会派が統一行動を取れなくなるケースが多いにあり得る。
Left: NYPD officers chalk-killing an unarmed African American (2014)
Right: Detroit police officers brutalizing an African American protester (1942) in front of a public housing project.
You can add Rodney King beating in 1991 in LA.
Scenes are so similar, but. . . .
Pundits say that a racial disturbance will lead to conservative backlash, but is it really so?
1943 Sojourner Truth riot in Detroit precipitated coalition building between civic liberals, white unionists, and civil rights activists. This coalition served as a backbone of the Civil Rights Movement. Racial disturbance does not always lead to backlash but sometimes help organize liberal coalitions.
Look closely at diverse crowds protesting killings of unarmed African American males on the TV screen right now. The videos are, more often than not, HD with FULL COLOR. These are not black and white. Then, we can build a coalition which will crush current political stalemate in Washington.