「多幸感」が過ぎ去って
オバマ政権が誕生して1年余りが過ぎ去った。支持率が低迷しているのは多くのメディアで報じられている通りだし、登場の華々しさのわりには「パッとしない」状態が続いている。
他面、多くの論者は、この政権をどう評価していいのかまだわからないというのが現状だろう。筆者も実はそのような当惑を感じている者の一人であるし、ここで大胆な評価をするのも実際のところ気が引ける。しかしながら、ずっと黙っているのもそれ以上に気が引けることなので、これからしばらく、いくつか思うところを整理したい。
まず手始めに2011年会計年度予算、良い線を行っているのではないか。
この予算の支出の大枠は、こういったものだ。教育とエネルギー政策関係を増額、国防予算はやや抑制気味、雇用創出のための支出大幅増。
対して歳入の方、ここではブッシュが富裕層に対して行った減税措置に幕が下ろされる。もともと2010年に終わるものであったが、「増税」という言葉を、かつての「共産主義」と同様に怖れる公衆を相手に、なかなかできるものではない。
アメリカにおいて、階級と人種は同じ意味ではないものの、複雑な似姿を描く。富裕層というとほとんどが白人なのに対し、失業者というと黒人の比率が人口比に不釣り合いに多い。健康保険改革の問題が頑迷な抵抗にあっているのも、(カーター元大統領が言ったように)それが人種問題と絡んでいるからだ。白人の富裕層は、彼ら彼女らが「だらしない」と見なす、都市の貧困層のために税金を使ったりしたくはないのである。
人種と階級の「綱渡り」。ひとつ歩みを間違えると、一気に下に落ちていく。おそらくオバマ政権が進めている足取りは、そのようなものなのだろう。