上の動画は、2005年のハリケーン・カトリーナの災害で最大の被害を受けたニューオーリンズのロウアー・第9区、マルディ・グラの祭典が行われる前夜の今年の模様である。
ちょっとした縁から、同地の災害復興ボランティアの参加する機会を得て、現在これは現地から書いている。ここで一緒に行動している者の中には、インドネシアのバンダ・アチェ地区で通訳として復興活動に参加した者もいるが、その人物の話ではニューオーリンズの復旧の方が「遥かに遅い」らしい。
ところが、わたしが同地に入る前にちらっと目を通した『地球の歩き方』では、日本の「郵便」にあたるUnited Postal Serviceの統計をあげて、85%の郵便が配達されていると紹介されている。もちろん、観光客に対し必要以上の恐怖感を煽らないことは大切だし、復興が着実に進んでいる側面もある。
では、さて、上の画像のなかに現れる地区の85%が帰ってきていると言えるだろうか?
実際のところ、郵便は配達されているのではない。わたしが復旧作業に入った家(ロウアー第9区より遥かに被害が軽かったアップタウンにある)には、宛名が違うが住所が同じ手紙が無造作に複数投げ入れられたままになっていた。所帯主に会ったが、その家には現在住んでいないらしい。住めないから。
借家に暮らしていれば、誰でも経験があるものだ、前の住人の郵便が配達されたことくらい。郵便はしたがって、住民帰還の指標にはまったくなり得ない。アメリカの場合、日本の住民票にあたる人口管理の方法がないので、その統計の取り方は難しいだろうが、郵政公社の値を参考にしては「ならない」ことだけは確かだ。
戻ってくることには、資力が多いに関係し、そしてその資力は人種と強い関係があった。この街の貧富の差、そして人種隔離された居住区の有り様は、これまで見たどれよりも凄まじかった(続く)