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連邦議会黒人幹部会 Congressional Black Caucus と大統領の関係 ── 多様性 diversity の今ひとつの側面

大統領就任式記念の昼食会でのオバマの挨拶で、名前が言及された人物が二人いる。ひとりはテディ。これは、今年の春に脳腫瘍の手術をし、昼食会が始まるとすぐに倒れたリベラル派のシンボルでケネディ大統領の実弟、エドワード・ケネディのことを。突然のこの事態にあたり、オバマ大統領は、彼の健康の回復を祈った。

もう一人は、ジョン。これは「公民権運動の突撃隊」と呼ばれ、数ある公民権団体のなかでももっとも急進的だった学生非暴力調整委員会のジョン・ルイスのこと。彼は現在連邦下院議員を務めている。

オバマは、この両者の共通点として、自分の当選には1966年投票権法の制定が不可欠であり、それにあたっては、テディ・ケネディが上院議員として、そしてジョン・ルイスが運動家として関係していたことに触れて、簡単な謝意を示したのである。

ジョン・ルイスが参加したセルマ行進では、アラバマ州兵がデモ隊に襲いかかり、彼は頭蓋骨骨折の重傷を負った。そんな彼は、その後のホワイト・ハウスまでの大統領のパレードのときにCNNの解説席に呼ばれ、就任式では涙がでてきたこと、そして運動の最中に投げ入れられた冷たい監獄のなかでは想像すらできなかったことが現実になったと良い、感無量のようだった。

ところが、このブログがかつて紹介しているように、実のところ、ジョン・ルイスはヒラリー・クリントンの支持者であり、オバマ支持に回ったのはジョージア州での民主党予備選が終わったあとである。

彼の場合、「自分の選挙区の民意には逆らえない」という考えが強く働いて、翻意につながっていった。ところが、黒人議員のなかでも、たとえば、下院議院院内幹事の高位の職にあるジェイムス・クライバーンなど、自分の選挙区がオバマに行っていても、最後までクリントンの支持の姿勢を変えなかった者もいる。

つまり、バラク・オバマは、黒人議員の支持を固めているとははっきりとは言えないのだ。彼の大統領就任がまちがいのない人種関係の歴史の新しい時代の幕開けであったとしても。

ここに来て厳しい立場に置かれているのは、そのような黒人議員たちからなる連邦議会黒人幹部会 Congressional Black Caucus (CBC)だろう。これまでCBCは、数ある議会会派のなかでも、もっともリベラルな会派として、もっとも団結した投票行動をとってきた。ところが、大統領が黒人となると、そしてその大統領と政策が噛み合わなくなった場合、会派が統一行動を取れなくなるケースが多いにあり得る。

たとえば、イリノイ州知事が、オバマの大統領就任で空席になった連邦上院議員の席に座る人間を指名する際、もっとも高額の賄賂を贈ってきたものにその席を与えるという汚職行為を摘発され、それでも憲法の規定にしたがって(アメリカではこの場合補欠選挙が行われるのではなく、州知事に任命権が与えられることになっている)公認を任命したとき、その任命された人物 ── 黒人のローランド・バーリス ── の議会出席を民主党幹部が妨害し、大きな問題になった。

このときのオバマの態度は、イリノイ州知事に辞任を求め、別の手段や人間によって後任人事を行うことだった。他方、CBCは、態度を表明できなかった。なぜならば、CBC内部の意思統一ができなかったからだ。

たとえば、かつてはブラック・パンサー党シカゴ支部の幹部であり、2000年の選挙では当時政界に入ったばかりのオバマを簡単に選挙で打ち負かしたこともあるシカゴ選出の連邦下院銀ボビー・ラッシュは、バーリスの承認を拒否しようとする動きには人種主義があるとし、民主党幹部の姿勢を激しく批判していた。他面、この大統領選の初期からオバマ支持をはっきりと言明していたCBC会長のイライジャ・カミングスは、憲政的手続きに則ってバーリスが任命された以上、それを否定することは憲法違反に当たるという意味から民主党幹部を批判していた。つまり、総論賛成各論反対の状態だったのだが、こういうときに行動に出られないのは政治の常だ。

実際のところ、CBCが人種だけに左右される組織だとしたら、もっと自体は簡単だろう。オバマ「候補」に対しても、彼は同会派の会員であるがゆえに、早い段階で一致団結した支持を表明していたはずだ。ところが現実はこれとは異なっていた。

黒人コミュニティ内部はおろか、黒人政治家のなかでさえ政治的姿勢や意見はいまや多様化しているのである。

それでもCBC議員のなかには、これまでは大統領に自分の政治姿勢を黒人の視点から説明する必要があったが、これからはそれがなくなる、と言うものもいる。それでも、今後、CBCとホワイト・ハウスは、おそらくまちがいなく何度も衝突するであろう。そこに見えるのは、このような多様化した社会だ。バラク・オバマの当選自体、アメリカ社会の多様性 diversity の証左だと言われるが、CBCとホワイト・ハウスとの関係もまた、 多様性の今ひとつの側面だと言えよう。

それとも、あまりにも急速に進む多様化に押されて、CBC自体が機能不全に陥るかもしれない。これを書き終えて思ったが、この可能性、実はそんなに低くはないように思えてきた。これが「ポスト公民権時代」の現象であることは間違いないが、果たして「ポスト人種」であろうか。今少し考えてみたい。

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2009年01月22日 11:19に投稿されたエントリーのページです。

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