ここのところ、当然のことではあるが、アメリカから伝わってくる「人種」や「黒人」に関連したニュースのほとんどがオバマの大統領選挙運動のことになっている。そこで、否、その文脈のなかで考えてみると、きわめて興味深いリポートのことを伝えたい。
下の11月12日のエントリーでも記しているが、昨年、40年前に全米の都市暴動に関して調査を行った「都市騒擾に関する大統領諮問委員会」、通称カーナー委員会が、今度は財団の支援を得て調査活動を行った。その調査の予備結果によると、この40年間の黒人の進歩、人種関係改善に関する成績はD+、つまり「合格最低点(日本でいう「可」)の上の方」というものになった。
オバマの華々しい活躍を脇に、NAACPデトロイト支部の前会長アーサー・ジョンソンは、「今日の経験から言いますと、昔と較べて顕著に良くなったと言えるところはほとんどありません」と述べている。
では、どこが特に成績評価を悪くすることに繋がったのか?。新カーナー委員会はわけても5つの点を指摘している(これは予備報告の結果であり、正式なリポートは今年中に公開される予定になっている)。
・就職にあたって、マイノリティは雇用者からもっとも待遇の悪い職種へと意図的に移動されている。不動産業者もマイノリティは環境の悪い住宅地に誘導し、住宅購入にあたっての融資も少ない。
・1968年以来、アフリカン・アメリカンの失業率は白人の2倍の高率を維持し続けている。
・学校間の格差が激しい。もっとも裕福な上位10%の学校は、貧困な下位10%の学校より、10倍もの教育予算を得ている。
・極貧状態(貧困とされるレベルの半分の所得)にあるアフリカン・アメリカンの率は、非ヒスパニック系白人の3倍に達している。
・同じ犯罪を犯しても、黒人は白人より長い刑期を言い渡されることが多い。
これらのいずれも黒人研究に従事しているものにとっては、残念なことに、見慣れたものだ。『デトロイト・ニューズ』紙による世論調査では、60年代後半以後、黒人が進歩したと感じるものは、黒人の場合、10人に6人にしか満たない(この件については、近々日中に論文にします)。
さて、ここで突きつけられるひとつの大きな問題がある。CNNの速報によるとオバマはヴァーモント州も制した。黒人の大統領候補誕生が目前になっているいま、この現象をいかに解釈すれば良いのであろう。
いずれにせよ、黒人研究者が、アイオワ民主党員集会以前の「人種」概念で、アメリカにおける人種を語ることができなくなったことは確かだ。