公民権運動の圧力によって制定された諸法は、人種隔離や投票権の剥奪など法的な差別を瓦解させ、黒人のミドルクラスの社会階梯の上昇を促したと爾来語られてきた。ところが、Pew Charitable Trust の調査を『ワシントン・ポスト』紙が報じたところによると、それが神話だったことが判明した。
1968年にインフレ換算した額で5万5600ドル以上のミドルクラスの家庭の出身者のうち、下位5分の1、つまり2万3000ドル以下の所得の階層に「下降」した人びとの率は43%にのぼる。
もっとも、この報道自体、3分の2の黒人が社会階梯を上昇していったとしているし、調査したサンプルはわずか730世帯にすぎない。しかし、このデータは、歴史人類学者で黒人のオランドー・パタソンが同記事で述べているように、アファーマティヴ・アクションは中流以上のものの利益にしかならなかったとする短絡な結論の再考を促すには十分であると考える。黒人の所得中央値に至っては、1974年から2004年までの30年間のあいだに12%も減少しているのである。