今から40年前、ニューアーク〜デトロイトの大暴動を契機に設立された都市騒擾に関する大統領特別諮問委員会(通称カーナー委員会)は、1960年代後半に頻発した暴動の原因を探る最終過程にあり、その結果は翌年の3月1日に公開された。『デトロイト・ニュース』紙が報じたところによると、今月11月18日、その「カーナー委員会」の「再調査」がデトロイトを皮切りに始まる。そして、同じく3月1日に、連邦議会に調査報告書を提出する予定であるらしい(この委員会報告の史的意義については、今年9月のアメリカ史学会年次大会で報告し、その原稿はこのサイトにアップしている。なおわたしは、その報告に基づいた論文を現在執筆中であるが、脱稿・発表の折には、ここで報告したい)。
今回の「カーナー委員会」には、しかし、1960年代と大きく異なることがある。それは、
(1)大統領の行政命令によって設立された67年の委員会と大きくことなり、今回の委員会には行政的威信も「国民が与えた権威 national mandate」もない。この委員会は、67年委員会の委員を務めたもののなかでいまも存命中のものに、アイゼンハワー財団が委託したものである。
(2)60年代のような大規模な「運動」がどこにも存在していない。したがって、報告が現状を告発するもの(それは多いに予測される)になったとしても、それを推す市民運動が存在していない。
(3)60年代当時と較べ、人種関係に関する政治学・社会学の調査・論考は、著しく増加している。したがって、今回の委員会の報告が目新しいものになることは、ほぼ期待できない。
1960年代当時と現在は異なる。それを踏まえたうえで、この委員会が何らかの報告書を出し得るだろうか。
2008年3月1日が単なる「記念日」にならないことを祈りたい。