サブプライムに関してまた新しい記事を読んだ。それは、「昔はレッドライニング、いまはサブプライム」と、このブログでわたしが論じたのと同じことを紹介しつつ、ひとつの具体例を挙げている。人種と住宅というと決まって名前がでる街、デトロイトの話。
住宅抵当開示法を利用したサブプライムローンの実態の調査が進むにつれ、デトロイト近郊ではこんなことが起きていた。二つの場所、それは「エイト・マイル・ロード」で隔てられているだけ。この「エイト・マイル・ロード」、地理的にはデトロイト市と郊外の境界を示すのだが、その社会的意味は、〈黒人が住んでいるところ(デトロイト市)〉と〈白人が住んでいるところ(郊外)〉の境界を示す。(エミネム主演の映画『エイト・マイル』は、したがって、彼が境界線上で生きてきたという隠喩である ── Dr. Dreは彼のことを「黒人として育った白人」と言っていた)。
そのエイト・マイル・ロードを挟んで二つのコミュニティがある。その様相を記すと
1.プリマス
97%が白人
所得中央値:51000ドル
2.エイト・マイル・ロードを挟んですぐ東
97%が黒人
所得中央値:49000ドル
1のコミュニティのサブプライム利用者:17%
2のコミュニティのサブプライム利用者:70%
さて、2000ドルの所得の違いがこのような差異を生むだろうか。この結果を生んだのは、人種別人口構成であると結論してどこかおかしいところがあるだろうか?。このニュースを報じる『ニューヨーク・タイムズ』は、黒人のサブプライム利用者は白人の2.3倍、ラティーノは2倍に達するという。
ここで急いで付け加えなくてはならないのは、黒人とラティーノに経済観念がないから、こうなったのではない。なぜかというと、
サブプライムローンはローン利用者が自発的に探していったものではなく、融資業者が積極的にローンを推奨したものだからだ。
アメリカのブラック・コミュニティを歩けばすぐにわかることだが、ハーレムだけを例外として、ほとんどのそのようなコミュニティでは銀行を探してもなかなか見つからない。金融業者がいるとすれば、チェックを換金してくれるところ。しかも、トラベラーズチェックのような手数料が本来要らないものであっても、なぜかそれをとられてしまう。それでも利用しなくてはならないのは、それよりほかに行くところがないからだ。
サブプライムを融資する業者は、そのようなコミュニティの弱みにつけ込んだ。
さて、次の地図を較べてみれば、それがよくわかる。
・2000年の黒人人口の分布
・サブプライム利用者の分布
これら二つは見事に重なっている。これはカジュアルな一致なのだろうか?。わたしにはコーザルな一致に思える。
しかし、融資業者はこう言うらしい(実際にそう言っているのが『ニューヨーク・タイムズ』の記事では紹介されている)。「ローンのコストが高いのは、地域の人種構成によってではなく、その地域の住民の信用が低いからでなのです」(不動産融資銀行協会の研究員の談)。
これで説明がつくから「自由市場」は怖い。
ここで彼らの言い分は循環論法になっていることにみなさんお気づきだろうか。ローン利用者は、サブプライムを借りることでその地域の信用賦与の確立を低くする→低いからサブプライムしか貸さない/借りられない→サブプライムがまた信用賦与を低くする。さて、どっちが最初に起きたのだろう!