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2007年11月 アーカイブ

2007年11月01日

どこかで見たような謝罪 〜 連邦司法省

大統領選挙を来年に控え、選挙の手続きに関する法整備が進んでいる。その理由は、もちろん、2000年のフロリダ、2004年のインディアナで起きた投票資格をめぐる論争・政争をいかに解決するかにあるが、現在そのインディアナ州を含めて拡がりつつあるものが、投票を行うに際して、写真入りのIDカードの提示を義務づけるとする動きであり、連邦司法省もそれを推している。

これに対し、NAACPを初めとする公民権団体は反対の意思を表明している。というのも、彼らの主張によると、自動車の所有率が低い等々、この法律が可決されると、人口比に不釣り合い率で黒人が対象にされるからだ。人種には触れていない立法が人種差別的に機能する、その意味において、この立法はかつてのジム・クロウ諸方を思わせるというのである。

そのような論争が繰り広げられている最中にあり、「黒人が不釣り合いに法の犠牲者になるわけではない」と、司法省投票権部部長、ジョン・K・タナーが主張した。これに続いたのがとんでもない理由付け。「なぜならば、どうせ黒人は早く死ぬのではないですか」。

当然、黒人議員を初め、野党民主党議員は激怒し、連邦議会でタナーを詰問し、彼は謝罪を行った。そこで彼が言ったことば、

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2007年11月04日

世にも恐ろしいひどい話 〜 続々編

サブプライムに関してまた新しい記事を読んだ。それは、「昔はレッドライニング、いまはサブプライム」と、このブログでわたしが論じたのと同じことを紹介しつつ、ひとつの具体例を挙げている。人種と住宅というと決まって名前がでる街、デトロイトの話。

住宅抵当開示法を利用したサブプライムローンの実態の調査が進むにつれ、デトロイト近郊ではこんなことが起きていた。二つの場所、それは「エイト・マイル・ロード」で隔てられているだけ。この「エイト・マイル・ロード」、地理的にはデトロイト市と郊外の境界を示すのだが、その社会的意味は、〈黒人が住んでいるところ(デトロイト市)〉と〈白人が住んでいるところ(郊外)〉の境界を示す。(エミネム主演の映画『エイト・マイル』は、したがって、彼が境界線上で生きてきたという隠喩である ── Dr. Dreは彼のことを「黒人として育った白人」と言っていた)。

そのエイト・マイル・ロードを挟んで二つのコミュニティがある。その様相を記すと

1.プリマス
   97%が白人
   所得中央値:51000ドル

2.エイト・マイル・ロードを挟んですぐ東
   97%が黒人
   所得中央値:49000ドル

1のコミュニティのサブプライム利用者:17%
2のコミュニティのサブプライム利用者:70%

さて、2000ドルの所得の違いがこのような差異を生むだろうか。この結果を生んだのは、人種別人口構成であると結論してどこかおかしいところがあるだろうか?。このニュースを報じる『ニューヨーク・タイムズ』は、黒人のサブプライム利用者は白人の2.3倍、ラティーノは2倍に達するという。

ここで急いで付け加えなくてはならないのは、黒人とラティーノに経済観念がないから、こうなったのではない。なぜかというと、

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2007年11月06日

『ニューヨーク・タイムズ』紙、タナーの更迭を要求

このところ大統領選挙に関する報道がずいぶんと増えた。ヒラリー・クリントン、バラク・オバマという、当選すればそれぞれ史上初となる候補がいるのが、こんなにも早い時期から関心を集めている理由であろう。

しかしながら、実のところ、アメリカの選挙には、2000年以後、ずっと懸案の問題がある。

それは投票された票をどのようにして数えるのか、投票資格の確認はどうするのかといった問題であり、最初は2000年のフロリダ、その4年後はインディアナ州でおきた。

連邦司法省投票権課が容易した答が、写真付きIDの提示である。問題は、そのIDが有料でしか手に入らないということ。つまり、結果として「投票税 poll tax 」と酷似した形式が復活することになる。ところが「投票税」を課すことはアメリカでは憲法違反である。

この窮状のなかで、公民権課長がジョン・タナーが発したのが、過日ここで伝えた「どうせ黒人は早く死ぬ」というものだ。

『ニューヨーク・タイムズ』紙は、5日の論説文で、さらには近年投票権課がマイノリティの権利保護をないがしろにしているという批判とともに、タナーの罷免を要求した。

さらにまた、それと同時に、情報を操作したり、脅迫をしたりでマイノリティの投票権行使の妨害を行うことを犯罪とする詐欺行為投票権妨害処罰法の早期可決を主張している。ちなみに同法の発案者は、バラク・オバマである。

オバマが当選するためには、当然のことながら、マイノリティの票は必ず全部カウントされなくてはならない。

2007年11月11日

2Pacシャクール芸術センター破壊事件容疑者逮捕

日本でも大々的に報道されたルイジアナ州の「ジェナ・シックス」事件を初め、ここのところアメリカでは黒人を対象にした「ヘイト・クライム」の増加が伝えられている。連邦司法省長官人事、さらには同省高官のセンシティヴィティを欠く発言も相俟って、司法当局の態度が厳しく問われ、今月6日には、アル・シャープトンやマーティン・ルーサー・キング3世などの公民権運動家──このような事件では「お馴染み」の面々──が、16日に、ワシントンD・Cでヘイト・クライムへの取締・捜査の徹底を要求する「巨大なデモ」を慣行するという宣言を発表した。

そのような緊張した脈絡において、アトランタにある2Pacシャクール芸術センターの外装が破壊され、「ジーナ・シックス」Jena Six 事件と同じく、この革命家の息子であるラッパーの銅像のクビに(ジム・クロウ時代のリンチを暗示する)「首つり縄」nooseがかけらえる事件が起きた。左のビデオにある通り、この事件は、したがって、当初「ヘイト・クライム」の嫌疑で捜査が進められた。

しかし、とんだ結末になってしまった。

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世にも恐ろしいひどい話 〜 続々々編

サブプライム・ローンと人種に関して、さらにはっきりとするデータを発見。以下のリンクにあるPDFページ、わけてもそのなかの表をご覧ください。高所得者のなかでのサブプライム利用者は

白人:5.2%
黒人19.6%

何をか言わん。

Center for Responsible Lending

なお、以上の数値は、2004年には判明していた。対策はあきらかに後手に回っている。

2007年11月12日

「カーナー委員会」の「再調査」が始まる

20071112_detroit_riot
今から40年前、ニューアーク〜デトロイトの大暴動を契機に設立された都市騒擾に関する大統領特別諮問委員会(通称カーナー委員会)は、1960年代後半に頻発した暴動の原因を探る最終過程にあり、その結果は翌年の3月1日に公開された。『デトロイト・ニュース』紙が報じたところによると、今月11月18日、その「カーナー委員会」の「再調査」がデトロイトを皮切りに始まる。そして、同じく3月1日に、連邦議会に調査報告書を提出する予定であるらしい(この委員会報告の史的意義については、今年9月のアメリカ史学会年次大会で報告し、その原稿はこのサイトにアップしている。なおわたしは、その報告に基づいた論文を現在執筆中であるが、脱稿・発表の折には、ここで報告したい)。

今回の「カーナー委員会」には、しかし、1960年代と大きく異なることがある。それは、

(1)大統領の行政命令によって設立された67年の委員会と大きくことなり、今回の委員会には行政的威信も「国民が与えた権威 national mandate」もない。この委員会は、67年委員会の委員を務めたもののなかでいまも存命中のものに、アイゼンハワー財団が委託したものである。

(2)60年代のような大規模な「運動」がどこにも存在していない。したがって、報告が現状を告発するもの(それは多いに予測される)になったとしても、それを推す市民運動が存在していない。

(3)60年代当時と較べ、人種関係に関する政治学・社会学の調査・論考は、著しく増加している。したがって、今回の委員会の報告が目新しいものになることは、ほぼ期待できない。

1960年代当時と現在は異なる。それを踏まえたうえで、この委員会が何らかの報告書を出し得るだろうか。

2008年3月1日が単なる「記念日」にならないことを祈りたい。

2007年11月15日

親しみの表現か人種主義の発露か?

ミネソタ州、ハムリン大学で、ハロウィンの日、白人が体と顔を真っ黒にし、「アフリカ」の「未開部族」の仮装をしたことで停学処分になった。この学生たちに近しいものは、事件が文脈を無視して誇大に伝えられており、処分を受けた学生たちにアフリカン・アメリカンを中傷する意図はなかったと述べている。

同様の事件は、実のところ、頻発している。

たとえば、2005年11月、シカゴ大学では、「極道渡世一直線パーティ straight thugging party」と題したダンスパーティを白人学生が開催し、その会場には、衣装として、手錠を片手にはめて、マニラ紙に包まれたビールを呑む学生がみられた。そのテーマに憤慨した黒人学生が抗議のために現場に向かったところ、白人学生のひとりが「ヘイ、リアルなヤツがきたぜ、俺たちはお前たちみたいになりたいよ」といった発言を行ったらしい。その学生は、シカゴ大学、つまりバラク・オバマが教鞭を執っていた大学の学生であり、「リアルな極道」ではない。そしてまた、大きすぎるバギー・ジーンズとTシャツ、それにベースボール・キャップといった「ヒップホップ」流の恰好とはほど遠い、「名門私立の大学生らしい」、ごくふつうの恰好をしていたという。

では、何が、彼ら黒人は「ゲトー・ギャング」(白人学生の表現)の世界からやってきたリアルなブラックと思われたのだろう?

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2007年11月16日

黒人のミドルクラス〜実は「負け組」だった

公民権運動の圧力によって制定された諸法は、人種隔離や投票権の剥奪など法的な差別を瓦解させ、黒人のミドルクラスの社会階梯の上昇を促したと爾来語られてきた。ところが、Pew Charitable Trust の調査を『ワシントン・ポスト』紙が報じたところによると、それが神話だったことが判明した。

1968年にインフレ換算した額で5万5600ドル以上のミドルクラスの家庭の出身者のうち、下位5分の1、つまり2万3000ドル以下の所得の階層に「下降」した人びとの率は43%にのぼる。

もっとも、この報道自体、3分の2の黒人が社会階梯を上昇していったとしているし、調査したサンプルはわずか730世帯にすぎない。しかし、このデータは、歴史人類学者で黒人のオランドー・パタソンが同記事で述べているように、アファーマティヴ・アクションは中流以上のものの利益にしかならなかったとする短絡な結論の再考を促すには十分であると考える。黒人の所得中央値に至っては、1974年から2004年までの30年間のあいだに12%も減少しているのである。

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