現在、ワシントンD・Cでは、リンカーン記念聖堂とジェファソン記念聖堂とのあいだに、マーティン・ルーサー・キング記念聖堂の建設が進行中である。
2008年に完成が予定されているこのプロジェクトの総予算は1億ドル、ワシントンD・Cのモールと呼ばれる国立の公園地域に、アフリカン・アメリカンを顕彰する碑が建つのは、もちろんこれが初めてになる。
リンカーンとジェファソンのあいだに立つ、キングの像、その立地はアメリカの歴史を考えると、とても素晴らしい場所だ。キング博士がアメリカの政治思想のなかで果たした場所として、ここより適したところはない。
他方、AP通信が報じるところによると、その予算の大半は、寄付によってまかなわれるようである。
そこで立ち上がったのが、黒人のセレブ(日本語のセレブではなく英語の意味で解釈してください)たち…。
スティービー・ワンダー(彼がキング博士のために動くのはこれが初めてではない)、アレサ・フランクリン、カルロス・サンタナ、クインシー・ジョーンズ、ラッセル・シモンズ(彼が動いたからにはデフ・ジャム系アーティストの更なる参加が期待される)、ワイナンズ、クラシック界からはジェシー・ノーマン、さらにはシャキール・オニール(このような催しにはなぜかマイケル・ジョーダンは現れない)も集まり、9月18日、ニューヨークのラジオ・シティ・ミュージックホールを皮切りに、チャリティコンサートを開催するらしい。それによって期待されている募金の額は7950万ドル、つまり、総予算の79.5%にのぼる!。
わたしは、このニュースを、『デトロイト・ニュース』電子版で知った。奇しくもこの土曜日は、デトロイトで、公民権運動史上最大のデモ行進、Freedom Walkが行われ、キング博士が、有名な「私には夢がある」の演説の基本的テーマを最初に大群衆の前で披露した日である。もう、そのときから44年の時を閲した。
44年前、黒人のセレブの力で約8千万ドルを集めようとしてもそれは無理だったであろう。これはある意味では、黒人がこの44年のあいだに歩んだ「前進」の道程を示す。そしてまた、国家の予算ではなく、「自助努力」に頼らざるを得ないのは、この44年のあいだに変わった国家と市民の関係を示すように思われる。