上のグラフは、アメリカにおける刑務所人口の変遷である。この異常な受刑者数の増加は、多くの犯罪学者が論じているところによると、80年代に入り刑務所が「民営化」されたのをひとつの原因としており、犯罪が増えたから民営化せざるを得なくなったのではない。
そして、その受刑者に占める社会的に不利な立場にある人びと(もちろんゲトーの黒人はそこに含まれる)の率は異常に高い。黒人に関していうならば、それは人口比の約4倍に達する。多くのヒップホップ・アーティストが刑務所での経験をラップするのは、その社会的環境の反映である。
民営化した刑務所がある街のなかには、その街の経済活動のほとんどが刑務所関係のものになているところがある。つまり、刑務所の民営化とは、犯罪犠牲者の悲しみ、そして罪を犯さざるを得なかったものの悲しみ、それらの人びとみなの悲しみのの向こう側で、そこから経済的利得を得ている人びとが生まれることを意味する。
かつて、公民権運動以前の南部では、「受刑者貸出制度」convict lease systemというのがあったが、刑務行政の実体は、少なくとも現在のアメリカにおいては、そのひとつの変奏型にすぎない。なかにはそれを現代版の奴隷制というものすらいる。
ところで、本日、日本で初めての民間の運営による刑務所が開所した。前のエントリーと同じ問いかけになるが、われわれの社会はいったいどこに向かっているのだろうか。
グラフの出典:U.S Census Bureau, Statistical Abstract of the United States: 2000 (Washington, D.C.: Government Printing Office, 2000), p.202.