コレッタ・スコット・キングの本葬が、8日、アトランタ市郊外で行われた。
3日に渡った告別式に訪れた人数はのべ15万人、本葬には、カーター、ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領、クリントン前大統領、ジョージ・W・ブッシュ現大統領の、大統領経験者3名が訪れることとなった。その模様は日本でも広く報道されたので、ご覧になった方も多いと思う。
その場で、マーティン・ルーサー・キングのことばを「代弁」するものが現れた。
まず最初は、マーティン・ルーサー・キングの同志であり、キングが創設した南部キリスト教指導者会議の会長を20年間務めたジョセフ・ロワリー。
晩年のキングがベトナム反戦の姿勢を強めたが故にアメリカ社会から孤立していった経緯に触れ、いまいちどキングの精神の重要性を説いた。ここまではありきたりなものだ。非暴力主義は、ことばの上だけでは、単なる理想論に終わる。重要なのは、ブッシュ現大統領が壇上(つまり、ロワリーのすぐ後ろ)にいると知っていて語った次のことば。
「大量殺戮兵器なんかどこにもありませんでした」。
現政権の批判に立ったのは、かつてのキングの同志だけ、つまり公民権運動家だけではない。
カーター元大統領は、キング夫妻が、アメリカ政府から私生活を監視され、人権を蹂躙されていたこと、そしてそれがアメリカ政府の過去の「汚点」のひとつであり、2度と繰り返してはならないと語った。他方、連邦議会では、ゴンザレス司法長官が、「テロリストとの闘い」のためなら「違法な盗聴も合法である」と強弁していた。
ブッシュ現大統領およびその側近は、このような批判を予測したかもしれない。2004年大統領選挙のときには、批判されるとわかっているからという理由で、全米黒人向上協会全国大会の招待を断ったことがあるくらいだから。しかし、低下する一方の支持率の歯止めになったよりは、クリントンの単なる脇役になってしまったようである。4人の大統領経験者のなかでいちばん大きな拍手を浴びたのは、トニ・モリソンが「最初の黒人大統領」と呼んだビル・クリントン前大統領だった。