今日、1月第3月曜日は、アメリカ黒人にとって特別な日である。マーティン・ルーサー・キングの誕生日(1月15日)を記念し、この日は、連邦政府の定めた休日となっている。
キングの誕生日を休日にしようとする運動は、1980年代に頂点を迎えた。スティービー・ワンダーがその運動のデモに加わり逮捕されたこともあった。多くの日本人が歌詞を理解していないように思われるが、彼の名曲、"Happy Birthday"は、その逮捕の時の怒りを語り、キング牧師への感謝の気持ちを歌い上げたものである。
休日になったのはいいものの、しかし、ここのところこの日が近づく度に、キングならびにキング家に対するネガティヴな報道が続いている。例えば…
『ニューヨーク・タイムス』は、キングの墓、研究施設、ミュージアムの複合施設、Marthin Luther King Center for Nonviolent Social Change(写真は、その施設にある公園、墓を中心にした池のまわりを黒人の子供たちが闊歩する姿)を売却しようとする動き、ならびにその動きに対して、キングの子孫のあいだでの対立が激化していることを伝えている。
『ワシントン・ポスト』は、キング家が名演説「私には夢がある」の知的所有権を保持しているがゆえに、演説の全部を多くの人びとが聞くことができない、と伝えている。(このことに問題があることは確かだが、彼の演説は、上記のセンターに行くとたった10ドルで売られているし、ネットで購入することもできる。学校が買えば、教材としての使用は自由だ。『ワシントン・ポスト』は、キングがもっとも愛した「もっとも恵まれていない人」がキングの財産管理人の貪欲さの犠牲になっている、と仄めかしているが、正直なところ、私にはこの論理がわからない。10ドルの教材を学校が買うことができないならば、それは根本的には教育をないがしろにしている行政の問題である)。
さらに、地元アトランタの『アトランタ・ジャーナル=コンスティチューション』は、キングの母親が所有物であった聖書が、本日、ネットオークションにかけられることになっている、と報道している。
『ワシントン・ポスト』が典型的にみられるように、これらすべてが、キングの子供たちの生き方を批判したものだ。上に書いたように、なかにはさっぱり論理がわからないものがあるが、多くのものは、残念ながら、正鵠を射ている。キングの子供たちは、キングほど「立派」な人物ではない。
しかし、そもそもマーティン・ルーサー・キングという人物自体が、人類の歴史上稀にみるカリスマと政治的嗅覚とをもった人物であった。彼と比較されては、しかも偶像化され英雄化された彼と比較されては、ほとんどのものが色褪せる。
雑音に惑わされないように、この日の意味を確認しよう。
キング博士、Happy Birthday!
I just never understood
How a man who died for good
Could not have a day that would
Be set aside for his recognition
Because it should never be
Just because some cannot see
The dream as clear as he
that they should make it become an illusion
And we all know everything
That he stood for time will bring
For in peace our hearts will sing
Thanks to Martin Luther King
Happy birthday to you
Happy birthday to you
Happy birthday
Happy birthday to you
Happy birthday to you
Happy birthday
(From Stevie Wonder, "Happy Birthday")
この歌は、一般に流布しているイメージと違って、友達や家族に捧げた歌ではないんです。キング牧師の誕生日を休日にする運動のテーマソングなのです。