「ブッシュが最も恐れた小学生」が、今週末よりアメリカのケーブルテレビに毎週登場する。番組のタイトルは『ブーンドックス』。
日本でも翻訳出版されている「漫画」ゆえに、このタイトルをご存じの方もいるだろう。「ブッシュが最も恐れた小学生」は邦語訳のサブタイトルである。
これは、異常にませた黒人少年ヒューイ・フリーマンとその弟ライリーが繰り広げる、辛辣で愉快な政治的メッセージたっぷりの4コマ漫画。
ヒューイ君の名前は、ブラック・パンサー党の創始者でカリスマ的指導者だったヒューイ・ニュートンに由来し、彼の政治思想は小学生なのになぜかラディカル。60年代のゲトーではなく、21世紀の郊外の中流住宅地にすんでいながらアフロヘア。ライリー君はギャングスタラップが大好き。
作者はアメリカ黒人のアーロン・マグルーダー。シカゴのサウスサイド生まれで、メリーランド大学でアフリカン・アメリカンスタディーズを修めたインテリで、当初は黒人指導者になろうとしたらしい。しかし、「もしそれで成功したら、34歳までに殺されてしまう」と「悟り」、漫画という媒体で「活動」を始めた。当初は大学新聞、その後全米中の新聞に掲載されるようになった漫画だが、邦語訳が出ているとはいえ、そのあまりにもの過激さに掲載を中止したところもある。
さっそく第一回でヒューイ君はこう語るらしい。
「イエス・キリストは黒人だ、ロナルド・レーガンは悪魔、9・11なんて政府の嘘」。
もっともマグルーダーは、いにしえのパンサー党のイデオロギーや古典的ブラック・ナショナリズムだけを吹聴するのではない。かつて彼の漫画は、シカゴに住んでいる人気トークショーの司会者で恰幅の良い黒人女性オプラ・ウィンフィリーから抗議を受け、今回のテレビシリーズではそれが放送できないらしい。テレビ局が、絶大なる人気を誇るこのトークショーのホストを、恐れたのだ。そこで、マグルーダー曰く。
「いやさ、誰だってオプラは怖いよ、そいつが健康ならばね」。
ちなみに、このブログでも紹介したカニエ・ウェストの発言についてはこう語る。
「黒人のことなんて政府はかまっていない、そんなこと、黒人でわかっていなかったら、もうとっくにトラブルに巻き込まれているよ。これで、白人もやっとわかってきただろうね、ジョージ・ブッシュは、フツーの白人のことも気になんかしていなくて、いっそのこと死ねばいいと思っている、てことが」。
さて、ヒューイ君の毒舌は何を引き起こしていくれるだろう。
なお、こんな恐ろしい漫画を配信するのは、何とソニー・ピクチャーズ。