『ワシントン・ポスト』紙の報道によると、ハリケーン・カトリーナ、リタでもっとも大きな被害を受けたニューオリンズ第9区は復興から取り残される可能性が高くなったようだ。
被災前に人口2万人だった同区の住民の圧倒的多数が黒人。住宅の半数以上が賃貸物件。さらには、その3分の1が貧困生活を送るのを余儀なくされていた。
しかし、ロックンロール草創期を担ったファッツ・ドミノもここに住んでいれば、アラン・トゥーサンやケーミット・ラフィンズ、そしてマルサリス家らジャズミュージシャンたちもここに住んでいた。なぜならば、この街の雰囲気が好きだったからである。あるものは、「そこにはハートとソウルと美があった」と言う。
ネーギン市長は、ニューオーリンズの全ての区の復興プランを策定していた。しかし、国家安全保障省の高官は、第9区の住宅の多くは「復興させることが不可能」だと語り、連邦住宅都市計画省朝刊は、もっと厳しく「第9区を再建するのはまちがいである」と述べている。
ここは有名な観光地、フレンチ・クォーターから2マイルしか離れていない。そこで、バーテンダーやウェイター、ウェイトレス、メイドとして働いていたのが第9区の住民たちである。つまりこの街のビートを地味だがしっかりキープしていてくれたのだ。
しかし、どうやらニューオーリンズ復興は、観光名所、ジェンティリーやレイクヴューといった中流・富裕層が優先され、この街を有名にした、この街のアイデンティティである場所が後回しにされるようだ。
アメリカは、安値で不動産を買い、高値で売り抜ける不動産ファンドの発祥の地。第9区の開発がビジネス中心、つまり市場原理に任されるとなると、それはかつての住民には帰還不能を意味する。不動産価格が高くなれば、彼ら彼女らは帰って来られない。
もうニューオーリンズは消えてなくなり、ニューニューオーリンズになってしまうのだろうか。