ニューヨーク市長選挙〜分裂する黒人世論
11月に行われるニューヨーク市長選挙は、共和党から現職のマイケル・ブルームバーグ、民主党からはフェルナンド・フェレールが立候補することになった。
今回の選挙でユニークなことは、フェレールがプエルトリコ系であるということである。一般的にヒスパニック・ラティーノと呼ばれる集団は、スペイン語を母語とすることを共通の特徴とするのみで、その政治的志向性は内部で大きくことなる。したがって、選挙や狭義の政治を議論する場合、この統計上の集団をひとつのグループとして考えない方が良いが、それでも近年のラティーノ人口の急増により、もはや黒人は最多のマイノリティの地位を完全に失った。
ここでさらに注目すべきは、近年、アフリカン・アメリカンの内部でも政治的傾向が変化しつつある。依然圧倒的に民主党が支持されていることに代わりはない。しかし、極めて多様なニューヨークにおいては、もはやアフリカン・アメリカンだからといって、フェレールを支持し、投票するとは限らないのである。
たとえば、現在進行中の選挙の「前哨戦」にあって、市民活動家で2004年民主党大統領予備選挙にも立候補したアル・シャープトンはフェレールの支持を表明している。しかし、ハーレムでもっとも政治力のある教会、60年代はアダム・クレイトン・パウエル・ジュニアが牧師を務めていた、アビシニアン・バプティスト教会の現牧師はブルームバーグを支持している。
これは、アフリカン・アメリカンから一桁代の支持率しか得られなかった共和党の市長、ルドルフ・ジュリアーニの頃ーー90年代、警官による過度の暴力や人権蹂躙を擁護し続けた彼のことを、アフリカン・アメリカンの運動家は彼のことを「アドルフ・ムッソリーニ」と呼んだーーと較べるならば、極めて大きな変化である。
11月、アフリカン・アメリカンの票がどちらに傾くかは予断を許さない。