ラップ・シンガー、カニエ・ウェストが行った、ハリケーン被害に対するブッシュ政権の行動批判が、アメリカのテレビネットワークの一部で検閲にあい、放送されなかった。
彼は、こう語った。
「ジョージ・ブッシュは黒人のことなんて考えちゃいない。だいたいメディアが俺たち黒人を描く姿だって大嫌いだ。黒人家族が歩いていたら、略奪者集団呼ばわり。白人家族だと、食べ物に困っていると言う。救済活動が始まるまで5日もかかったのは、被害者のほとんどが黒人だったからだ。こうやって批判をしている俺にしても、偽善者かもしれない。だって、テレビを観ていて辛くなるばかりだから、現実から目を逸らしてしまったんだ。それに、寄付をする前に買い物にも行った。そんな調子でも、いまマネージャーを通じて、俺の財布からいくら出せるか、その最大限の額がいくらになるのかを調べてもらっている。つまり、赤十字はいま最善を尽くしているだろう。その一方で、救助に使うべき人びとがいままた別の戦争を起こそうとしているんだ、その許可を貰っているんだ。俺たち黒人を撃ち殺す」。
この発言の最後の部分は、治安回復のために、政府が窃盗犯射殺命令を出したことに触れている。
それにしても、自らを「偽善者」だと認め、良心の呵責に苦しんでいるこの発言は、ひとのこころをえぐりとっている。その刃の鋭さに恐れをなしたものがいるのだろう。さもなければ、なぜこの発言が放送禁止になるのかわからない。