11月に実施されるニューヨーク市長選挙で非ラティーノ白人ーー一般に言う白人ーーが、ニューヨークの歴史上初めて、少数派になる。
これまでずっと過半数を占めてきたいわゆる「白人」の率は、01年市長選で52%、04年大統領選で51%と漸減を続け、つぎには遂に48%になる。
これで過半数以上のブロックを形成する人種、もしくはエスニック・グループは存在しなくなった。
アメリカのいくつかの都市ーーデトロイト、クリーヴランドなど主に中西部ーーでは、1980年に同様の現象が起き、そのときには黒人が多数派を形成した。しかし、ニューヨークの場合、過半数には達しないが、比較多数を構成する集団は、ラティーノになる。
問題はこの「ラティーノ」というカテゴリ。スペイン語を話す中南米出身者を一般的に指示するーーヒスパニックと同じーーであるが、この集団の政治的傾向は著しい多様性がある。たとえばマイアミのキューバ系は共和党の支持母体である。他方、ロサンゼルスのチカノ(メキシカン・アメリカン)は民主党リベラル。
ニューヨークでは、キューバ系でもチカノでもなく、プエルトリカンがこの集団内の多数派であり、事実、民主党候補に指名されたのはサウス・ブロンクス出身のプエルトリカン、フェルナンド・フェレール。
他方、近年の投票傾向は、人種やエスニシティよりも経済的位置によって決まる方向に進んでいるという指摘もある。つまり、住宅所有者であれば、黒人であっても、ラティーノであっても、アジア系であっても、白人であっても、共和党を支持する確率が高まってきているのである。
昨年、ロサンゼルスでは、史上初のチカノ市長が誕生した。他方、ニューヨークの歴史上初めて黒人として市長となったデイヴィッド・ディンキンスは、「最初で最後の」と呼ばれることさえある。
なぜならば、人種、エスニシティ内部での多様性が近年強まっているからだ。事実、ジュリアーニからブルームバークへと共和党市政が続いたニューヨークであるが、黒人からほとんど支持されることのなかったジュリアーニと異なり、黒人のブルームバーク支持者は増加する傾向にある。
もはや白人が多数派でなくなったときにいったい何が起きるのか、これは近未来に起こることの踏まえた仮説として問われてきたことだが、今やそれが現実になろうとしている。
なお、黒人指導者アル・シャープトンは、フェレール支持を表明した。
結果が注目される。