アメリカの人種隔離政策(アメリカ版アパルトヘイト)segregationを違憲とする判決、ブラウン判決を引き出すにあたって極めて協力な「科学的証拠」を提供した臨床心理学者ケネス・クラークが亡くなった。享年90.
彼については、拙訳ナット・ヘントフ『アメリカ、自由の名のもとに』にヘントフの筆による長文のエッセイが掲載されている。
彼の業績のなかで有名なのが「ドール・テスト」。黒人と白人の人形を黒人に選ばせ、黒人の美的感覚が人種隔離制度のためにいかに歪められているのかを「立証」した(心理学的には、しかし、この結論には多くの反論があった)。
これで、公民権運動を担い、先頭に立った人の多くがもうこの世にいなくなってしまった。思いつくのは、彼より1世代若い、ブラック・パンサー党幹部、ボビー・シール、キャスリーン・クリーヴァー、イレーン・ブラウンくらいか…。
一方、公民権運動が目的としたものは達成されていない。それはおろか、一度は勝ち取った成果さえも、新保守主義、ネオ・リベラル、ネオコンと続いた過去四半世紀の歴史のなかで、ほぼ転覆されてしまっている。