グラミー賞候補がアナウンスされる時期が近づいてきた。そのなかの有力候補、エミネムの"Just Loose It"をスティービー・ワンダーが酷評。
タイトルから想像つくように、これはマイケル・ジャクソンの大ヒット曲"Beat It"を幾分かパロディにしたものだ。イメージ・ビデオでは、ジャクソンの「児童虐待容疑」への皮肉が込められている。
スティービー・ワンダーを怒らせたのは、そのタイミング。「ひとが意気消沈しているところになぐりかかるのは褒められたことじゃない」というのが彼の意見。
さらに、スティービーの怒りはこれだけでは止まらなかった。「[エミネムには]これまで敬意respectを払ってきたが、考えてみれば、彼は2Pacにはとても及ばない」。さらには、「低所得者が多い黒人が多くのファンになってくれたから成功できたのに、こんなことをやるなんて、ヤツはbull shitだ」と発言。スティービーにとって、エミネムは「偽善者」。
スティービーは生まれたときからずっと光を見たことがない。ゆえに「肌の色」を物理的意味ではしらない。彼にとって肌の色は「社会的構築物」であり、「自分と同じコミュニティに属するか否か」で決定されることになる。
スティービーは、したがって、「肌の色が白い」エミネムに怒ったわけではない。
ブラック・コミュニティで"respect"は極めて重い価値を持つ。それがわからないエミネムは、したがって、「よそ者」なのだ。
多くのものを当惑させる存在、白人ヒップホップアーティスト、エミネム、彼が引き起こした現象を考えると、いろいろ面白いことがでてきそうな気がする。