Sean "P. Diddy" Comb 政界へ
Sean "P. Diddy"は、今回の大統領選挙で黒人の有権者登録を促進するために結成した組織、Citizen Change (民主党支持)の活動を継続させると発表。
今回の選挙で高まった、黒人青年層の政治への関心を維持し、将来の政治・社会の変革の力にすることが目的、と言明。
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Sean "P. Diddy"は、今回の大統領選挙で黒人の有権者登録を促進するために結成した組織、Citizen Change (民主党支持)の活動を継続させると発表。
今回の選挙で高まった、黒人青年層の政治への関心を維持し、将来の政治・社会の変革の力にすることが目的、と言明。
1960年代、キングの「右腕」として活躍したアンドリュー・ヤングが、『アトランタ・ジャーナル・コンスティチューション』に投稿した記事で、今回の選挙におけるヒップ・ホップ・アーティストの活動を大々的に評価。わけても、ラッセル・シモンズのHip Hop Team Vote Initiativeと、前にこのブログで伝えた、P Diddy CombsのCitizen Charge Campaign。
なお、政治的無関心が心配されていた黒人青年の投票率は、この大統領選挙で急上昇。18歳から29歳までの青年の半分が投票に赴いた。2000年と比較すると、実数にして、460万の増加。
このたびの結果の悔しさを胸に、2008年を待とう!
マーティン・ルーサー・キングが初代会長を務めた公民権団体、南部キリスト教指導者会議(SCLC)が崩壊の危機に瀕している。
同団体は、90年代以後、指導層の仲違い、団体資金の横領等々の問題が噴出していた。2003年に、その窮状を救うべく、アラバマ州バーミングハムでキングとともに大闘争を率いた人物、フレッド・シャトルスワース牧師を会長に迎えていた。
今回、最高意思決定機関である理事会が会長を更迭、それと同時に会長が理事を更迭するという事態が起き、団体の機能がまったく麻痺する状態に陥ってしまった。
『アトランタ・ジャーナル=コンスティチューション』紙が報じているところによると、この情況に関する意見を問われ、キングの伝記を著しピュリッツァー賞を受賞した歴史家デイヴィッド・ギャローは「もはや解散した方が良い」と述べている
公民権政策にもっとも重要なポスト、司法長官が交代した。
反アファーマティヴ・アクション、反妊娠中絶、人間は神が創ったと信じているキリスト教原理主義者ジョン・アッシュクロフトが辞任。後任にはラティーノのアルバート・ゴンザレスが指名され、いま上院での承認を待っている。
しかし、キリスト教原理主義者からラティーノへの交代を、ブッシュ政権の「性格」や「路線」が変わったと考えるのは早計にすぎるだろう。なぜならば、ゴンザレスは、ジョージ・W・ブッシュがまだテキサス州知事だった時代から法律顧問を務め、わたしがこのウェブサイトで批判したシャカ・サフォア死刑囚の死刑執行を実施に移させた人物にほかならないからだ。
ゴンザレスの法的判断は一貫して保守的なものである。
上院の審査では、サフォアの件を含め、彼が政治的意図で法律の精神をねじ曲げてきたことをしっっかりと調査してもらいたい。
カリフォルニア州で反アファーマティヴ・アクションの運動の先頭に立っていた黒人実業家、ウォード・コネリーの提案が、この度、否決された。
その詳細はこんなもの。
コネリーは現在カリフォルニア州立大学理事会の理事を務めている。彼は、両親がそれぞれ異人種・異民族の属する学生の5%が特定の人種にカテゴライズされることを嫌っており、自らのアイデンティティを「多人種」mutiracialとしたいと思っていることを根拠に、入学願書の人種・民族記入欄に「多人種」のカテゴリーを含めるように要求した。
ここまでは実に筋の通った、「ポストコロニアルの現在」を映し出す「進歩的」な提案のように聞こえる。
ところが、既にカリフォルニア大学では、multiracialのアイデンティティを持っている志願者には、それを表明することができていた。ことは単純、いくつかある志願書の欄の複数にマークを済め終わり。このようなことができたからこそ、コネリーは、そもそも異人種・異民族結婚をした両親を持つ学生を調査することができたのである。
カリフォルニア大学理事会の他のメンバーは当然コネリーの提案に反対した。コネリーは、現行の願書は「人種主義的である」と断言していたのだが、そのロジックがわからなかった、と伝えられている。
わたし自身も、彼の主張はさっぱりわからない。
どうやらここでポストコロニアルの現在は、現代アメリカでも最も保守的なものを育んでいるように感じる。アントニオ・ネグリとマイケル・ハートの下のことばは、このような事態を見事に察知している。
「ポストモダニズムとポストコロニアリズムにとっての大切な概念の多くは、現在の資本や世界市場のイデオロギーと完全に呼応している。世界市場のイデオロギーは、つねにすぐれて反基礎づけ主義的で反本質主義的な言説であった。流通、変動性、多様性、混合は、まさにその可能性の条件なのである。交易は諸々の差異を一緒にするのであって、差異がより多ければ、それだけ楽しみも多いのである!差異(すなわち商品、住民、文化、等々の差異)は世界市場において、無際限に増殖しているようにみえる。それは固定された境界を何よりも暴力的に攻撃している。それは無際限の多数多様性によって、いかなる二項対立的な分割をも凌駕するのである」
アントニオ・ネグリ、マイケル・ハート『帝国』(以文社、2003年)
司法省の公式統計によると、2003年の公民権侵害に対し司法省が起訴を決定した案件は、わずかの84件であることが判明。
クリントン政権最後の年が159件であったことを考えると、なんとこれは47%の減少にあたる。
この数値は「市民的自由を尊重し、、その方面における成績は前政権より良い」とするアッシュクロフト司法長官の主張を見事に否定している。彼は、愛国者法によって市民的自由に制限をかけることに一所懸命なあまり、アメリカが豪語する「自由」の礎となるもの、すなわち公民権・市民権・市民的自由にはわずかばかりの関心しかなかったことが、これで明らかになった。
NAACPが、大統領選挙直前に、国税庁から特別捜査の対象にされてしまった、という件については、ここでも紹介してきた。
さて選挙戦が終わり、何と、NAACPは、同組織の大会を欠席したブッシュに対し、改めて会談を求める懇願を行った。会長のクウェイシ・ムフーメは、大統領に宛てた手紙のなかでこう述べる。
「あなたの信頼を得るためならば、わたしはあらゆる術を尽くすでしょう。新しい4年間は、[2分裂した国民をそのままにしておくのではなく]人びとに手を差し伸べ、国民を再びひとつのものにするのにならねばなりません。一つの国土、一つの憲法、一つの未来を共有しているのですから。わたしたちが一致団結し、行動をしたならば、偉大なるアメリカに限界などないのです」。
んんん?、とお思いの方がいらっしゃるだろう。
しかし、ほんとうにNAACP会長のことばであり、ブッシュ大統領のクリシェではない。今回の選挙が公民権勢力にとっていかに大きな打撃であったのか、それをこの手紙は物語っている。
11月2日、大統領選挙に併せて、南部アラバマ州では、義務教育を規定すると同時に、人種別の教育を命令した州憲法を改正する住民投票が採択に付された。
わたしは、2004年においてもまだ人種隔離を命じた憲法が存在していることに驚いた。
さらに驚きは、投票の結果。
2000年大統領選挙、2004年大統領選挙よりずっと僅差ではあるが、1850票差で、改正の提案が否決されたのである。
提案に反対していた団体の長は、人種隔離の規定よりも、義務教育を規定したところに反対の力点を置く。これがあっては、連邦裁判所から教育予算の増額を命令され、ひいては増税につながるというものだ。
『ワシントン・ポスト』紙の記者、トマス・エドサルの著書に、アメリカにおいては、税金論議に「人種問題」が影響を与えていると指摘する。つまり、福祉や教育の充実など、増税につながりかねない支出の増加は、「黒人への支出」を意味するのである。
それでもひとつ事実は変わらない。アラバマ州憲法には未だに人種隔離教育を命じた条文が存在する。
死後7枚目になるTupacの新譜、Loyal to the Gameが発売される。
そのなかの一部の曲は、海賊版としてすでにネットに出回っているらしい。
『ボルチモア・サン』紙と『USAトゥデイ』紙のオンライン版の速報によると、NAACP会長、クウェイシ・ムフーメが辞任することになったらしい。辞任に当たって、ムフーメは次のよううな声明を出している。
「この歴史ある組織が危機のとき、わたしは会長になりました。今やこの組織はかつての力強さと信頼を取り戻すに至っております。それを思い、誇りを胸に抱きながら会長の職を辞することに致します」
たしかにムフーメが会長になったときのNAACPはひどい状態だった。前会長の横領にセクハラ・スキャンダル、その果てには320万ドルの負債。それを再建したのは、ムフーメ会長とジュリアン・ボンド執行委員長による現指導層である。
しかし、わたしはムフーメが、自分の成し遂げたことに満足し、会長を辞することを決意したとはどうしても思えない。国税庁が「嫌がらせ」まがいの査察を開始したこと、それが遠因、否、陰の原因である気がしてならない。
このブログで伝えてきたように、SCLCはいま最悪の状態にある。アメリカ黒人を主体とするリベラル勢力が、再びアメリカ政治の中心に立つ、その鍵はNAACPが握っている。
次期会長が誰になるのか、それが発表されるのをいまは静かに待とう。アメリカが変わる、それを、まだ、信じながら…。