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「黒人票」の消滅

ヴァージニア州リッチモンドの市長選が面白い。

リッチモンドでは市議会が市長を任命する制度が過去50年のあいだ続いていた。(これはアメリカの地方政治では珍しいことではない)。今年、それが直接選挙になった。

現在、最有力候補とされているのが、南北戦争直後の「再建期」を除くと、1989年に黒人として初めて州知事になったL・ダグラス・ワイルダー。

知事に当選するには、人口上アメリカの多数派である白人票の獲得が不可欠である。ワイルダーが知事の経歴をもっているということは、彼が人種の壁を越えた訴求力をもっているとともに、黒人の「特殊利益」だけを追及する政治家ではないということも意味する。

そんなワイルダー当選に対抗しているのが黒人市議会議員。彼ら彼女らは、9人の定員のうち5つの席を占めている、そうなっているのもリッチモンドという都市内では黒人が多数派だからだ。

ここで興味深いのが黒人市議会議員の主張の論理。「市長直接選挙は、黒人の票の力を弱めることにしかならない」。ここには選挙区、つまり居住区が人種によって隔てられているアメリカの地政学が映し出されている。彼ら彼女らにとって、黒人が白人に統合されることは、彼ら彼女らの「地盤」の破壊を意味する。彼ら彼女らの政治活動とは、黒人の「特殊利益」を主張すること。

しかし黒人のワイルダーは来る11月の当選を「確実」なものにした。

このようなリッチモンドの事情は、黒人は多種多様な政治的指向性を、もはや「黒人票」なるものは存在しないことを如実に示している。黒人が特定候補に圧倒的支持を与える時代は急速に昔のものになりつつある。

出典:『ニューヨーク・タイムズ』

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2004年10月05日 09:25に投稿されたエントリーのページです。

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