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2004年10月 アーカイブ

2004年10月03日

黒人の投票権

『ワシントン・ポスト』によると、キング牧師の夫人、コレッタ・スコット・キングが、オレゴン州ポートランドで開かれたNAACPの会合に出席し、刑期を終えても選挙権を剥奪している州を批判した。なお、このような方法により、全米6州で黒人男性の4分の1が「合法的」に選挙権を剥奪されている。他方、刑期中のものにも投票権を与えているのはオレゴン州とメイン州のみ

2004年10月05日

「黒人票」の消滅

ヴァージニア州リッチモンドの市長選が面白い。

リッチモンドでは市議会が市長を任命する制度が過去50年のあいだ続いていた。(これはアメリカの地方政治では珍しいことではない)。今年、それが直接選挙になった。

現在、最有力候補とされているのが、南北戦争直後の「再建期」を除くと、1989年に黒人として初めて州知事になったL・ダグラス・ワイルダー。

知事に当選するには、人口上アメリカの多数派である白人票の獲得が不可欠である。ワイルダーが知事の経歴をもっているということは、彼が人種の壁を越えた訴求力をもっているとともに、黒人の「特殊利益」だけを追及する政治家ではないということも意味する。

そんなワイルダー当選に対抗しているのが黒人市議会議員。彼ら彼女らは、9人の定員のうち5つの席を占めている、そうなっているのもリッチモンドという都市内では黒人が多数派だからだ。

ここで興味深いのが黒人市議会議員の主張の論理。「市長直接選挙は、黒人の票の力を弱めることにしかならない」。ここには選挙区、つまり居住区が人種によって隔てられているアメリカの地政学が映し出されている。彼ら彼女らにとって、黒人が白人に統合されることは、彼ら彼女らの「地盤」の破壊を意味する。彼ら彼女らの政治活動とは、黒人の「特殊利益」を主張すること。

しかし黒人のワイルダーは来る11月の当選を「確実」なものにした。

このようなリッチモンドの事情は、黒人は多種多様な政治的指向性を、もはや「黒人票」なるものは存在しないことを如実に示している。黒人が特定候補に圧倒的支持を与える時代は急速に昔のものになりつつある。

出典:『ニューヨーク・タイムズ』

2004年10月10日

シャープトン、ジャクソン、ケリーを支持を確認

前回の大統領選の勝者を決めた場所、フロリダ州マイアミのバプティスト教会で、ジェシー・ジャクソン、アル・シャープトンとともに、ジョン・ケリー大統領候補が説教壇に立った。

シャープトンは今回の民主党大統領予備選挙に出馬している。そして彼のケリーに対する姿勢は、かならずしも明確なものではなかった。他方、ジャクソンは、ハワード・ディーンヴァーモント州知事を支持し、同じくケリーへの姿勢は明確ではなかった。さらに、彼がシャープトンを支持しなかったことは、黒人指導層の分裂を物語っていた。

大統領選挙終盤に入り、遅ればせながら、黒人指導層がケリーへの支持を明らかにした形である。

しかし、いずれにせよ大多数の黒人は民主党支持であるし、問題は、彼ら彼女らが何の妨害もなく投票することができ、投票した票が正確に数えられること、その法的・制度的整備を急ぐべきだろう。もはや投票日まで1か月もないのだが…

出典:『ニューヨーク・タイムズ』

公民権委員会、異例のブッシュ批判

公民権委員会が、ブッシュ政権の政策を批判するリポートを発表した。

委員会は問題点として以下の点をしてきしている。
・公民権保護のための政策が不充分
・投票権保護のために対策を充分に講じていない
・教育政策やアファーマティヴ・アクションの領域での政策努力が不充分
・ヘイト・クライム対策が不充分

委員会は総じてこう判断している。ブッシュは「緊急の対応を求められている公民権問題に対しリーダーシップを発揮してもいなければ、言動が一致してもいない」。

なお、大統領選挙投票日まで一か月を切った時点で、このような報告が出るのは異例のことである。

こうなると、ブッシュは良い政策として何をしたのだろうか?、と疑問に思えてくるくらいだ。

2004年10月29日

国税庁、NAACPを「捜査」

ジョージ・W・ブッシュが、公民権団体NAACPの年次大会の招待を拒絶し、NAACP幹部から批判されたことについては、このブログでも伝えてきた。

信じられないが、どうやらその「ツケ」がまわってきたようだ。

NAACPはNPOとして登録されており、それゆえに政治活動はできないことになっている。10月29日、国税庁は、NAACPが法律で禁止されている政治活動を行ったとして、捜査を開始した。

問題となっているNAACP大会は6月に開催されているのに、大統領選挙投票日のわずか4日前にである!。

NPOという概念は日本では新しいが、アメリカでは古くから存在する非課税非営利団体の規定である。NAACPは、これまでも何度も、公民権政策に敏感な民主党候補の支援活動を行ってきた。しかし、それが問題となって捜査対象にされたことは一度もない。

また政府から政治活動をなかば「強要」され、それに従順にしたがったこともある。冷戦の時期、共産党活動家を団体から追放したのだが、ある政治信条を叩き出す行為を「政治活動」と言わず何と言おう。だが、このとき、国税庁は何もしなかった!。

以下にNAACP執行委員長ジュリアン・ボンドの声明を緊急掲載する。

「NAACPは、政策論議をしたのであり、政治活動をしたわけではありません。大統領選挙投票日前夜にNAACPを黙らせてしまえ、これはそんな行為にほかななりません。なぜなら、アフリカン・アメリカンの有権者登録に関していえば、わたしたの団体がもっとも活発に行動してきたというので有名だらからです。明らかに、これが国税庁のなかの誰かには気に入らなかったのです。大統領の批判は許されない、とか、大統領は無謬であるとかいった類のことが現実になるとすると、それはジョージ・オーウェルが描いた全体主義国家と同じになります」。

ボンドとまったく同意見である。わたしはいまアメリカで起きていることがまったく信じられない。


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