『ワシントン・ポスト』が報じたところによると、ワシントンD・Cで行われた市議会議員の民主党予備選で、同市の最も貧困な地区、第8区の住民は、1960年代には学生非暴力調整委員会SNCCの活動家であった公民権運動のヴェテラン、マリオン・バリーを選出した(2位になった候補の2倍以上の得票)。
バリーは、かつて同市の市長を務めていたことがある。しかし、FBIの麻薬捜査班のおとり捜査に「ひっかかり」、マリファナを買うところをビデオに録画され、そしてそれが公開され、スキャンダルにまみれたかたちで、市長職を辞職した。違法薬物取引に関しては、実刑判決を受け、その刑期を終えている。
刑期を終えたのち、彼は市会議員に立候補し、最初の復活を果たした。しかし、今度は汚職の問題で糾弾され、再選を果たせなかった。
したがって今回のバリーの当選ーーワシントンD・Cの民主党員は共和党員の10倍に達するーーは、彼にとって2度目の「復活」になる。彼が「草の根」レベルで圧倒的な「人気」を持ち続けていることの証左だ。
1960年代、彼は極めてラディカルで献身的な青年活動家だった。そのイメージは、多かれ少なかれ、現在の彼の衰えない人気につながっているはずだ。今度こそ、その「イメージ」を現実にして欲しい。第8区の人びとの「人気」に、何よりもまずこたえて欲しい。
なお、選挙戦の争点は、ワシントンD・Cにメジャーリーグの球団を誘致できるスタジアムを建設するか否かだった。バリーは、スタジアム建設よりスラムの環境改善を主張し、当選した。ところが、ご存じの方も多いと思うが、ついこのほどモントリオール・エキスポズがワシントンD・Cにホームを移転することを発表した。有権者の投票による意思表示など政治家は構っていないようだ。どこかの国とそっくりである。