60年代公民権運動の中心的存在だった南部キリスト教指導者会議(SCLC)の派閥争いが激化している。
事の発端は、昨年11月のキング3世の会長辞任。同団体は、マーティン・ルーサー・キングを中心に組織されたものであり、キングの縁者がトップにいる限り、ある程度の内紛は押さえ込むことができた。しかし、キング3世の辞任は、内紛が激しくなるきっかけになってしまった。(辞任の理由は、すでに起きていた内紛の調停に「疲れてしまった」から)。
今回、50年代から60年代にかけてキングの側近中の側近だったラルフ・アバナシーの息子、アバナシー3世が会長に立候補した。しかし、立候補する前に、彼は、64の団体をSCLCに加盟させようとした。
これが会長選挙に勝つための工作であるを見破った暫定会長は、新規加盟団体の会長選挙での投票権を剥奪するという措置をとった。(これはSCLCの内規に規定された会長権限のひとつである)。
奇妙なのはアバナシー3世のこの動きをサポートした人間。元ブラック・パンサー党議長イレーン・ブラウンが、アバナシー3世の側近を現在務めている。なお60年代にSCLCとパンサー党とのあいだに関係は一切なかった。
いま現在、アメリカ社会に影響力をもっている黒人の団体はNAACPだけである。こうなったのも、ほかの団体がこのSCLCのような内紛によって迷走を続けているからだ。NAACPにしても10年前は同じような状態だった。そうこうする内に、黒人団体が真っ向から対立している人物がホワイト・ハウスの住民になってしまっている。
SCLCの内紛は、こんにちのブラック・コミュニティがかつてのような同一性をもっているものではないこと、そして、そのなかでマイノリティの運動はどうすれば良いのか、その道の選択に困惑していることを示している。